![]() |
|
| 1. 20世紀はどんなことがあったか 戦争は最大の環境破壊である。この100年の間に経験した2度の大戦では、敗戦国も戦勝国もともに大きな破壊を被った。また1990年に起こった湾岸戦争で、イラクは多国籍軍の攻撃によって敗退したが、その際にクウェートにあった油田に火を放った。このため、重油が燃えてその黒煙は空や海を汚染し、生態系にも大きな影響を与えた。これほどでなくても一度国土が戦場となれば自然保護や環境保護には構っていられないことになってしまう。 その領土が戦場とならなかった米国は第2次世界大戦後、世界一の大国となった。政治体制の異なる米ソ両国はそれぞれ多くの同盟国を持ち、世界を二分していわゆる冷戦時代が長く続いた。1989年のソ連の国内体制崩壊に始まり、ベルリンの壁が崩れて東西冷戦は終結し、世界の勢力地図は大きく変わろうとしている。特に20世紀最後の年には、韓国と北朝鮮の国家代表が公式訪問し、21世紀の早い時期に両国は一体化するであろうと予測され朝鮮半島の平和統一への足がかりを見た。 大きな国力を犠牲にして、一般市民を飢餓に追いやってまでも強い軍隊を持つということは21世紀には考えられないだろう。 公害防止から環境へ 我が国では敗戦後、目覚ましい経済発展を遂げたが、それと共に深刻な公害問題が起こり、それによって健康上の障害を受ける人が多く出た。その中には水俣病やイタイイタイ病、四日市喘息のように極めて重篤な病気を発症するケースが少なくなかった。そこで1970年には公害国会と称する国会が開かれて、この年の12月には大気汚染防止法から水質汚濁防止法等々を含めて14本の法律が成立した。その上、公害を防止するためにそれを専門に取り扱う役所として環境庁が設立されることが決まり、翌1971年7月1日に発足した。 当時は環境庁などの努力によって公害病患者の治療までは成功しなかったものの、患者の増加は防止された。実際、大気の質が非常に改善されて大気中の硫黄酸化物の濃度は著しく減り、富士山が都心から望見できるほど大気がきれいになった。 環境破壊が起こった場合、それを償うのは環境汚染者の責任であった。PPP(ポリューター・ペイズ・ペナルティー)というのが国際的にも通用する原則であった。すなわち公害病患者に公害被害を補償する必要があるとすれば、その資金は公害を発生させた企業が支払うべきであるという原則である。環境復元の費用も同様である。 当時大気中の硫黄酸化物濃度は著しく下がってきたので、すでに発生した患者の治療の責任はあるとしても、新規の公害病が増えてもそれは工場から煙を排出して窒素酸化物を含んだ煙を排出している企業の責任ではないという反論がでてきて、この公害病患者の認定作業は早々に打ち切るべきであるという意見が企業側から強く要求された。環境庁は板ばさみの苦しい立場に立ったが、この産業側の意見は国会でもしばしば取り上げられるようになり、ついに88年3月にこれ以上は新規の患者を認定すべきではないという方針が定まった。 その他にも、自動車から排出される窒素酸化物などの健康影響も深刻になり、研究所でさまざまな実験でも明確な判断をすることが難しい。高濃度の硫黄酸化物で発症する急性疾患については大気汚染の影響が明らかであるが、慢性影響や複合汚染の影響となるとその影響効果の境目を決めることが難しい。これを環境基準というが、結局のところ0.05ppmが障害を起こすギリギリの濃度(※)であるということが明らかになってきて、これが大気中のNOXの環境基準として採用され、現在まで続いている。※1時間値の1日平均値が0.04から0.06ppmのゾーン内またはそれ以下であること。 |
| 2. 食物連鎖による生物濃縮 野生生物減少が新聞などで最初に大きく報道されたのは北欧のアザラシで、1988年に8千頭から1万頭ぐらいが海辺に打ち上げられ、アザラシが死んだ原因を多くの科学者が調べていた。その結果、アザラシには犬の伝染病であるディステンパーが影響を与えたというニュースが流れた。しかしよく考えてみると犬は海の生物ではなく、またアザラシは陸上には上がって来ないのにどうして犬の伝染病であるディステンパーに伝染して、この大きな海の動物が死んでしまうのか大きな疑問であった。その他いろいろな生物の異変が起こっていることがわかってきた。1977年にはカモメのメス同士が巣篭もりをするというような、鳥の同性愛というのもわかってきたし、ワニが減ってきて、生殖器の異常も確認された。このようなことが世界各地で起こり、その原因を多くの科学者が研究した。 図1【第二次大戦以降に五大湖の野生動物にみられた異常現象】
これはアメリカのテオドラ・E・コルボーン博士が書かれた論文から引用されたものである。ハクトウワシは卵の殻が薄くなったりして、次の世代にも影響があるということがわかる。鳥類にはこのような影響がたくさん見られる。鳥だけではなく、サケやマスのような魚類にも見られ、その他、ミンクやイルカ、鯨の一種にも影響がみられている。> ここから何がわかるかというと、プランクトンが海の中、あるいは水の中に入ると、それをアミ類が食べる、それを食べる魚、そしてそれを食べるもっと大きな魚、そして最後には人間が食べる。有名な水俣病は工場からの排水が水銀によって汚染されている。この量くらいの水銀ではその影響程度では大きな水俣湾の大量の海水には影響がないと私たちは思っていた。その濃度はppt(1兆分の1)程度で少しぐらいの毒性があっても人間に直接影響することがないと思っていたが、食物連鎖によって濃縮されていったのである。PCB(ポリ塩化ビフェニール)については植物プランクトンでは水中濃度の250倍だったものが2500万倍に濃縮されることが判明している。 科学的な実証(エビデンス)として取り上げたのが、合成化学物質はホルモン作用を錯乱する可能性があるということである。それから母体内の化学汚染物質は子供の発育に影響するということである。これは非常に恐ろしいことである。それを食べた大人が影響を受けるのではなく、お腹の中の胎児が影響を受ける。また小さい子供がこういうものを取り入れると大人よりも影響が大きい。ホルモンというのは極めて低濃度の、1兆分の30程で影響が出る。ホルモンは毒物とは違い、ちょっとの量で元気がでて、あるいはちょっとのことで大きな影響がでる。それは本人の気分にも影響を与える。このようなフェノールなどは人間のホルモン作用をコントロールするのである。 極めて微量のPCB(これは発癌物質で使用を禁止している)、またダイオキシン、これらは母親の母乳、胎児から影響を及ぼし、子供の神経の発達を妨げるだけでなく、赤ちゃんの場合でも母乳を通じて送られる非常に恐い物質である。 天然にある女性ホルモン(エストロゲン)。これが体の中でつくられると、ちょうどこれと合体するものが細胞核の中に用意されている。これをレセプターと呼んでいるが、ホルモンとレセプターが合体するとDNAに働きかけて目的とするたんぱく質を合成し、正常なホルモン作用を発揮する。そして女性が女性らしくなり、女性としての機能が備わってくるのである。天然のホルモンは目的とするたんぱく質を合成して本来の役割を果たすのであるが、天然以外のビスフェノールAやノニルフェノール、DDTなどは人工で作ったもので、合成化学物質であるが、これが誤って細胞内に入ると非常に似たような形をしているのでレセプターに結合するのである。つまり異物が結合するのである。そしてDNAに作用して必要でないのにたんぱく質を作ることとなり、その結果、違った効果が現れるのである。 違った効果と言うのは何かと云うと、性器に腫瘍などの異常を引きおこし、さらには胎児に極めて大きな悪影響を及ぼすことなどである。 |
| 3. 新エネルギーは何処まで利用できるようになったか エネルギー源としては、原子力、火力(これは石炭、石油および天然ガスを燃して蒸気を作り、発電するもの)、水力、太陽光、風力およびガスタービン、その他である。 1997年1月4−5日付けヘラルドトリビューン紙によれば、新エネルギーがこれからは多く使われることになろうとある。確かに火力は温暖化ガスを発生して気候変動の原因となることが多く、新エネルギーを導入する必要がある。
この場合に固定と変動費を比較すると図に示したとおりである。図中の数字は1995年のキロワットあたりのセント(100分の1ドル)である。気候変動防止の立場からすれば水力が費用がかからず最も有利であるが、落差のある水力の発電資源はすでにほとんど開発され尽くしている。これに較べて火力発電は比較的有利であるが、二酸化炭素が発生する。原子力や新エネルギー(太陽光、風力およびガスタービン)は、通常ピーク時の電力の補給用に利用されている。確かに図に示したとおり、原子力は高くはつくが、気候変動問題を考えると止むを得ない選択の一つである。 |
| 4. 循環型社会形成推進基本法とは 2000年5月に循環型社会形成推進基本法という法律が国会で成立した。これは地球の資源は有限であるが、それが大量に利用された後に捨てられてしまう。この廃棄物が非常に増えてきている。1999年、瀬戸内海豊島(てしま)の産業廃棄物問題が解決したが、それをすべて綺麗にするにはさらに18年の歳月と300億の費用が必要であると見込まれている。これらは全て人間に由来するものである。このような廃棄物を少なくするためにはリサイクルを行って、できるだけ最終的に廃棄される量を減らしたり、また資源を有効に利用したりすることが望まれる。これからはゴミ処理と簡単に云われることに対して、ハイテクノロジーが利用されることになるであろう。このようにして資源は何度でもくり返し有効に使われるようになることが期待されている。 |
| 5. アホウドリの保護活動について 第90回(2000年)日本学士院授賞式では、海鳥研究者・東邦大学理学部助教授の長谷川 博氏がアホウドリ(アルバトロス)の固体数を回復したという功績でエジンバラ公賞を受賞された。これはWWF(世界自然保護基金)総裁であられる英国のエジンバラ公・フィリップ殿下の寄付で始められた賞で、自然保護に貢献のあった人に与えられる。アホウドリは昔、非常に広い範囲で認められていたが、羽を伸ばすと幅2メートルにも達する大型鳥類である。その肉は大量で人間にも好まれ、動物にも食べられ、羽毛は人間に利用されて、急速にその個体数が減少してきた。特に動作が緩慢なために容易に捕獲され、ほとんど絶滅の状態になってしまった。 東京から2000海里南下した太平洋上に浮かぶ鳥島はアホウドリの生息地として有名であるが、この鳥はほとんど絶滅の状態になった。そこで長谷川氏はこのアホウドリを回復させるまでに、実に70回以上もこの孤島に出かけられた。現在では無人島であり、長谷川氏は避難小屋に何日も滞在し、アホウドリの足に目印の標識をつけ、その生態を調べるとともに、ここに巣を作って卵を温めるように環境を整えてやった。その結果、現在は個体数が1000羽以上に達した。30年以上にもわたって努力された成果である。 動物が死んでしまうと、その次はヒトにも影響を与えることになるので、生物多様性を守ることは非常に大きな環境問題である。現在世界中では生物が絶滅し、その種類が減少している。 この現象は、環境ホルモン(内分泌系撹乱物質)といわれる物質によるものではないか。もしそうだとすればこれは結局ヒトにも大きな影響を与えることになる。環境ホルモンについては、アメリカのティオドラ・E・コルボーン博士、ダイアン・ダマノスキーおよびピーターソン・マイヤーズによって書かれた「奪われし未来」(1997年)という本に詳しく書かれている。 |
| 6. ナチュラル・ステップ 例えば地球温暖化はどうして起こるのかというと、地球の中にある石炭や石油、天然ガスなどを使用した時に発生する二酸化炭素が大気の中に残存して、生物圏内の天然の物質循環を乱す。生物圏の中では太陽の光で植物が生長したり、あるいはそれを食べる動物がいたり、人間活動が行われたりするが、増加する二酸化炭素はそういう自然の物質循環を乱す原因になるという認識をカールヘンリク・ロベール博士は示した。博士はストックホルムのカロリンスカというノーベル生物・医学賞を審査する有名な病院の医者で、特に小児癌が専門である。 人間の体が病気にかかり、癌になっていくのと地球が病気なることが非常に似ていると考えた。人間にもメタボリズム(代謝)というのがあるが、それが狂うと病気になる。それと地球環境が異常になるのとが似ているという事に気が付いた。そこで人間については癌にならない、また地球については環境問題が発生しないように、健全な地球への回復(リカバリー)のための治療が必要ということである。そのためには一部の機能だけを治療するのではなく、システム的に全身を治療しなければならない。大気汚染だけを解決するのではなくて、その影響で酸性雨となり、その雨によって植物が枯れてしまったり、それによって魚や動物に起こる様々な現象は互いに結びついている。よってシステム工学的に問題を解決しなければいけないということに彼は気がついた。 それには手順を追って全体を治していかなければならないことである。できるだけ最小限に必要なものだけを最大限有効に使う。そして公平に誰でも使えるように子孫にも残しておく。それがエンバイロメンタル・エティックス、つまり環境倫理というものであるというのを条件として提案した。 例えばシステムの条件として、(1)地殻からの物質濃度の生活圏内での濃度制限、(2)人工物質濃度の制限、(3)生物圏の多様性の維持、(4)資源の効率的、公平な利用などである。 これを農業に当てはめて見ると、現在は農薬を使ったり、殺虫剤を使ったり、住宅を建てたりして農地面積が減少している。そこで生産性を上げるために農薬を使う。肥料として使う窒素利用にも無駄が多いことがわかってきた。作物成長剤として化学肥料を使ったり、殺虫剤や農薬を使う。そこで新しい提案としてはそういうことをする代わりに家畜や人間の有機性廃棄物を土壌へ還元したり、リンを節約して循環利用させたり、雑草と害虫の増加を防止するための輪作、天敵を利用したりして、エコシステムの生産能力の維持、畜産と穀物栽培の結合、窒素分の流出が少ない循環システムを作る、というものである。これらは昔行われていた農業の知恵を見直すというものである。 これを現在の社会に当てはめると、ステップAとしては持続可能な社会の原則を共有する、ステップBとして上の4つの原則を基に現在の状況を分析する、ステップCとしてビジョンを掲げ、とりうる全ての対策を考え出す。ステップDとしては対策の優先順位を決め、実践プログラムを作成する。これがナチュラル・ステップのシステム思考の枠組みである。 博士は、スウェーデンの全家庭と学校に430万部の冊子とカセットテープを配ったところ、スウェーデンの国王が非常に関心を持たれ、スウェーデンでこの運動が普及しつつある。 |
| 7. 自然保護を通じてよい子を育てよう 近頃は少年による犯罪が目立つようになって、これが大きな社会問題になってきた。少年が急に凶暴な犯罪を起こすのは何が原因であろうか。人を殺してはならないとか、うそをついてはいけないとか、弱いものに対しては優しく保護すべきであるとかという人間の道徳の根本についての教育をさらに強化するべきであるという意見も表明されている。しかし、ただ頭だけで考えるのではなくて、実際に体験をして体で覚える。つまり自然の中に入って生活したり、環境保護の体験をすることが望ましいと考えられている。 グラウンドワーク グラウンドワークはイギリスのサッチャー首相の時代に「小さな政府」が提案されて、環境を管理するために大きな省庁を作るよりも、地域のボランティアの活動を助成してその地域に根付いた環境管理を考えるべきであると提案された。この様な趣旨に基づいて作られたのがグラウンドワークの活動である。グラウンドワーク、すなわち大地の上に根付いた作業という意味で、言葉を変えれば「草の根運動」と云える。 地域ごとに一種のトラストを作って自治体も企業もそして住民もこれに参加する。余暇のある人は余暇を提供し、寄付ができる人は資金を提供し、知恵のある人は知識を提供し、皆で環境を守るという行動である。中央にもグラウンドワーク協会が存在し適当な指導、助言を行う。また必要に応じて資金を提供して行動し易いように援助する。この運動はイングランド一帯に広がって成果を収めている。炭鉱がある地域もあれば、農業地域も、工場地域も含まれている。 我が国でも同様な活動を普及するために、日本グラウンドワーク協会がある。具体的な活動として静岡県三島市を紹介しておく。三島市は、富士の白雪が溶けて流れて伏流水となり三島に下るという古い民謡があるが如く湧き水には恵まれた地域で、この綺麗な湧水を保ためには下流域までの環境を保全しなければならない。そのためには自然の浄化作用を利用し、汚物で流れが堰きとめられてそれが澱んだりしないように小川の流れを綺麗にする必要がある。これを一部の有識者だけで行うとすると大変な作業であり費用を支出するのが困難で行政で対応することが不可能となってしまうが、三島市グラウンドワーク協会ではたくさんの市民の力を集めて、見事に清流を復活させている。 |
| 8. 環境教育と環境倫理について 環境教育 学問には、自然科学と社会科学がある。自然科学は数学、物理、地学、気象学や天文学も自然科学に入る。社会科学というのは文学、歴史、哲学、地理である。美学や倫理学はこちらに入る。これらは古くはギリシャのアリストテレスから自然科学、形而上学すなわち、人文・社会科学となって別々に発達してきたのである。しかしよく考えてみると環境はこれらの全ての学問を全部含んでいるのである。二酸化炭素が出ると地球の熱放射が変わって地球が温暖化してしまうなどというのは自然科学の一つの考え方である。環境が悪くなったのは産業革命以来のことで、その過程を現象的に調べる、それが社会に与える影響などを調べていくことも環境の学問の一つで、そちらは人文・社会学である。 凡そ学問の中には環境に関係のない学問は一つもないといっていい。焦点が何処を向いているかが大切で、例えば帯広の温度は二酸化炭素の濃度が増えたらどうなるか、松林がなくなったら気候的にどのような影響が起こるのかというのは数学を使って解くことができるが、その様な目的をきちんと与えたらどの学問も全て役に立つということが云えると思う。しかしそれでもなお、環境教育としては不十分である。環境問題の原因や環境についての知識を知っていても環境教育にはならない。 環境教育はやってみなければいけない。環境基本計画の中に循環・共生・参加・国際協力という4つのキーワードがある。その中の参加とは実行ということである。国際的に協同で参加しなければならない。 環境倫理 環境倫理では大きく3つの原則を掲げている。一つは、「公平の原則」。世代間や地域間で環境に対する権利や義務は公平でなければならない。つまり今の人が生きていられれば後はどうなってもいいというのは環境の倫理観に欠けているということになる。都会に住んでいる人は良いけれども農村に住んでいる人はどうなってもいい(逆もあるが)という考え方は地域間の公平という原則に反している。 二つ目は「生存権」。人間は生きているというだけで一つの権利がある。人権(ヒューマン・ライト)は基本的な原則である。本来その人が持っている人間の権利を奪ってはいけないということ。これは民主主義であるからとか軍事政権であるからとか、敵対している国であるからといって許されるものではない。イギリスでは動物愛を拡張して、アニマル・ライトも主張されており、新薬開発のための動物実験なども許可されない。またさまざまな宗教や民族に共通するのが「殺生をするな」、「汝の敵を愛せよ」という考え方である。生命というのは動物だけではなくて植物にもある。それは人間を殺してはいけないという人権と同様である。 三つ目は「地球全体主義」。地球の生態系は閉じた世界であるから、利用可能な物質とエネルギーの総量は有限であるということである。そのなかで全ての生存可能性を求めるためには、倫理的選択が不可避である。 |
| 9. 企業の取り組み、ISO14001とは これからの企業には非生産および生産の両者とも環境を考慮しない経営はありえない。それは国際標準規格の14001号である。そこで、近頃は企業もISO14001の認証を取得することが奨励されている。それには具体的には省エネや省資源を管理的または技術的に取り入れて、このような資格を取得した技術者を増やすことが望ましいが、その他にも環境保護について独自のルールを作っている。例えば経団連ではすでに1991年に環境憲章を作り、また個別の企業でもこのような環境に配慮した経営の憲章(社是)を作っているところが多い。 しかしながら現在の地球環境問題は大変複雑に関連しあっている。システム分析のような方法で総合的に地球環境問題を理解すると同時にシステム工学的な方法でその解決を図らなければならない。さらに環境は時間と共に変化してくるもので、システム・ダイナミックスの理論の利用も必要となるであろう。したがってISO14001を取得するだけでは十分ではなくて、地球環境問題を体系的に理解し、その保全のために有利な方法を工夫することが必要である。国際標準化機構(ISO)が取り決めている環境関連の規格14000シリーズがあるが、特にISO14001は生産サービス、経営に関して環境対応の立案、運用、点検、見直しといった管理・監査システムが整備されることが必要である。 この認定を取得するには日本環境認証機構の審査を受けて正式に登録される必要がある。特にヨーロッパの各国では多くの企業がISOの認証を受けているので、ヨーロッパ向けの輸出の場合にはこの認証取得企業であることが有利である。しかし、環境に配慮した経営となると奥が深く際限がない。そこでISOの認定の取得はその第1歩として意味がある。 |
| 10. 環境問題は来世紀にはどう変わるか 地球環境問題の調査研究には、国立の機関だけでは対処できないニーズが沢山ある。また、環境問題は国民の誰もが考えなければいけない重要なテーマである。私は最初から情報の公開を進め、研究成果を広く社会に伝えることの大切さを感じていた。そもそも環境の研究には秘密などない。なるべく早く、正しい情報を多くの人に伝える必要がある。 21世紀は環境の世紀になると、私はリオで開かれた地球サミット(1992年)の頃から言い続けてきたが、今やそれは世界のキーワードになりつつある。地球環境の悪化を放置していれば人間の生存自体が脅かされてしまうという危機感と、地球環境は人間の活動を抑えてでも守るべきだというのが21世紀に向けての決意といっても良い。地球サミットの直前に、私は環境庁長官の要請により「環境にやさしい文化の創造をめざして」という提言をまとめた。自然と人間が共生する中で培われてきた日本の文化を、私たち自身が思い起こし、外国の方々にも知ってもらおうというものであった。今後も環境を守ることを中心にすえた道徳教育の重要性がますます高まると考える。 地球環境問題では公害時代に経験したPPPの原則は通用しない。それは環境汚染の加害者と被害者の区別が明確に分けられないからである。エネルギーを使ってCO2を出しているのは貴方であり、気象変動で洪水が発生して道路が閉鎖されたり家財道具が流されたりするのも貴方であるからである。 21世紀には行政も市民も協力して問題解決に向かわなければならない。先進国も途上国も協力して国際的に問題に取り組まなければならない。最先端の知識や技術が環境問題の解決に応用されなければならない。 |
| 「インターネット市民講座」の著作権は、各講師、(社)日本環境教育フォーラム、(財)損保ジャパン環境財団および(株)損保ジャパンに帰属しています。講義内容を転載される場合には事前にご連絡ください。 All rights reserved. |