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1.日本の自然と日本人 現在の世界人口は約61億人であるが、そのうち約12億の人は、毎日衛生的で安全な水を飲むことができない。世界では、このような水不足が原因で、年間約400万人が死んでいる。8秒に一人という割合である。特に、アフリカやアジア地域では深刻な状況である。 日本はどうか。高度成長期から注目された公害のような問題はあるが、総じて日本は豊かで、きれいな水に恵まれている。かつての世界中の船乗りは、おいしい水が飲めるという理由で、神戸や横浜に立ち寄ることに憧れていたくらいである。 日本はありがたい国である。水道料金は安いし、水は当然のこととして、おいしいものだ。しかし、外国ではそうはいかない。外国へ旅行すると、生水はお金で買わないと飲むことはできない。日本の清らかでおいしい水は、俳句や和歌にも度々詠まれてきた。そして、日本の水は四季ごとに微妙な変化を表す。それに鋭い感覚で反応したのが日本人である。表現豊かな言語を持つ日本人ならではのことだ。「水商売」「水に流す」など水にまつわる言葉が多いのは、日本人と水との生活が多面的で密着しているからである。 2.日本の農業 日本人は、水田稲作民族である。水田は稲をつくる意味のほかに、地下水を涵養し、洪水調節の役目も果たしている。水田は水の循環にとって大変良いしくみとして機能している。したがって、農業などの第一次産業は、「自然とどうつきあうか」という産業でもある。 日本人は、古くから循環思想という固有の思想を持ち、農業で使う水を通して、私たちは水とつきあう術を培ってきたのだ。 また、日本の四季は明確である。特に日本の秋は長い。10月、11月はとても豊かな季節で、秋の長さが果物をおいしくさせている。四季が明確で四季ごとに水とのつきあいを上手に変えているのが日本人の特徴である。 3.日本の河川の特性 日本には特別大きな川はない。信濃川や利根川のように日本では大きい川も、外国の大きな川の規模と比べると桁違いに小規模である。日本は小さい国土にたくさんの川がひしめきあっている。 また日本の大都市では、人々の住居は川より高いところに在る。ロンドンのテムズ川は、ロンドンの一番低いところを流れている。 外国に比べて日本の洪水対策は難しい。多くの欧米の都市を流れている川はほとんどその都市の低いところを流れ川の勾配が小さいために、洪水の流れがゆっくりで、時間に余裕を持って洪水予報が出せる。しかし日本の地形は急峻なので、たちまちに洪水が到達する。洪水の流れが速く、洪水予報は大雨が降ってすぐに出さねばならず、大変に難しい。 1997年に河川法が大幅に改正され、「河川環境の整備と保全」という言葉が初めて使われた。「河川事業の目的」として、今までは「治水」と「水利用と水資源開発」だけだったのが、ここに「河川環境の整備と保全」という項目が加わったのである。これは大きな変化である。 日本は森林大国で、国土の面積の2/3は森林である。このような国は世界的にみてもめずらしい。狭い国土の3000m級の山から急勾配で駆け下りてくるのが日本の川の特徴である。たとえば、駿河湾の深さは1万m位ある。したがって富士山から駿河湾の高度差は、14000m位になる。また、富士川や大井川は海に入ってからがさらに急流である。 新潟平野、濃尾平野など、日本の主な河川の中流域から下流域には沖積平野が広がっている。沖積平野は、何万年という年月をかけて洪水が運んできた肥沃な土地である。農耕地として良好な土地である。洪水が運んでできた平野なので、洪水に見舞われるのはしかたのないことでもある。そして川底の地盤が高く、天井川にもなる。日本は洪水と同居しているようなものである。高潮被害も多い。台風も多い。北国は豪雪地帯である。したがって、大治水事業をしないと土地は安全にならないし、治山治水が重要で難しい。 大型台風が来たときに、その土地のそれまでの開発のされ方がテストされる。その前の約10年位の開発によって、水害の質や程度が左右される。流域の開発の仕方とそれに対応する河川事業によって、洪水や水害の状況が影響を受ける。 また、都市化に伴って対策を打たないと水害を大きくする要因となる。急速な都市化にあわせた災害対策の措置を十分にとらなかったために、被害が甚大になる。 4.これから求められること 日本人は古くから水や川などの自然とのつきあい方が巧妙であった。非常にデリケートに水や川の変化をよく理解し、つきあい方を心得ていた民族である。ところが明治以降、また戦後の急速な経済発展により、目先の経済発展を優先し、日本人特有であった自然との上手なつきあい方を忘れてしまったのではないだろうか。 経済的利益ではないもの、数字で測れないもの、自然が持つ奥深さと上手につきあってきた心をもう一度見直すべきであろう。自然との巧みなつきあい方を呼び覚まし、清らかで美しい日本をとりもどしたいと強く思う。 |
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